Hayabusa 2
本研究室で提案された「環境駆動」というコンセプトに基づき開発された環境駆動型移動機構(EDT, Environement Driven Torquer, Fig. 1)がMinervaII-2(ローバ2)の移動機構の一つとして採用されました.MinervaII-2は小惑星のような微小重力下で移動するための技術を検証するために,大学コンソーシアム(東北大学,山形大学,大阪大学,東京電機大学,東京理科大学)で開発した小惑星探査ローバで,小惑星探査機はやぶさ2に搭載されました.はやぶさ2は,2014年12月3日に打ち上げられ,2018年6月に小惑星「リュウグウ」に到着.2020年12月6日に試料が入ったカプセルを地球に届け,現在も次の小惑星に向かって飛行中です. MinervaII-2は,4種類の移動装置を搭載しており,環境駆動型移動機構はそのうちの一つです.環境駆動型移動機構は,小惑星の昼と夜の大きな温度差を利用して機構を動かし,ローバをホップ(ジャンプ)させるアイディアがベースになっています(Fig. 2).このように,「環境駆動」とは,電気を介さずに環境エネルギーを直接運動に変換すること特徴です.小惑星「リュウグウ」の自転周期は7.6時間なので朝,夕の2回,おおよそ4時間おきに動くチャンスがあります.
このアイディアを実現させるために,熱膨張率が異なる2種類の金属を張り合わせたバイメタルを使うことにしました.バッテリーもCPUも必要ありません. 環境駆動型移動機構は,本研究室で開発した磁石ラッチ型と峯田研究室で開発した座屈型が90度ずらして組み合わされています.30g以内という制限の中で,ホップする可能性を広げるためです.MinervaII-2は2019年10月3日にはやぶさ2から分離され,小惑星「リュウグウ」の周回軌道を回った後,小惑星上に着陸しました.残念ながらMINERVAII-2の不具合でローバの状況は確認できませんでしたが,現在もリュウグウ上にあり,昼と夜を7.6時間毎に迎えています.
開発した環境駆動型移動機構を確実に動作させるために,研究室内に微小重力シミュレータ(Fig. 3)を独自に開発して実験を繰り返したり,ブレーメン大学(ドイツ)のZARM Drop Tower(Fig. 4)に出向いて実験を行いました.
Fig. 1 環境駆動型移動機構のフライトモデル
Fig. 2 環境駆動型移動機構の原理
Fig. 3 ラボ内での微小重力実験
Fig. 4 ZARMでの落下試験
はやぶさ2から分離されたMinervaII-2
小惑星探査機「はやぶさ2」@haya2_jaxa Twitter
参考文献